Column

#53


by marcy B  

 

上には上が

先日、事務所のあるマンションで
下りのエレベーターに乗った時のこと。
普段からよく顔をあわせるが
挨拶することもない
無愛想な年配の女性と一緒になった。
もちろんエレベーター内で会話などない。
1階に着いたのでOPENのボタンを押して
「どうぞ」と言うと
「いいわよ」
と、こちらが先に下りるよう促した。
「レディファースト」と言うと、
「あら、ありがとう」
と言いながら下りていった。
普段、無愛想な人でも礼は言う。
妻いわく「レディの言葉に喜んだんじゃない」
そうかもね。

数日前の朝のこと。
打ち合わせに行くため
自宅マンションの前でタクシーを待っていた。
丁度、ガードレールがない場所があり
タクシーを拾うのに便利なスペースだ。
空車のタクシーが来たのだが
赤信号のため5台くらい手前で停車してしまった。
「来た、来た」
運転手もこちら見て気がついている。
油断禁物
あとは信号が青になればと思ったとき、
この一瞬にスキが生まれた。
後ろからつかつかと
ガードレールぎりぎりに割り込み
手をあげる女性がいたのだ。

ムカッ!

なぬっ、なんとモラルのない。
明らかに私の方が先に待っていたのに・・・
その女性は0コンマ何秒という速さで
こちらをチラッと見たが
まったく意に介さず
「失礼」のひと言もない。
ケッ、幸せになれないぞ、お前ェ!
まあ、私より後ろで待っていたら
「お先にどうぞ」と譲ったとは思えないが。
ここで声を荒げても大人げないなと思っていると
われわれ2人の前を悠然と車道を歩く女性がいた。

うん?

ま、ま、まさかぁ!!


その女性は信号待ちの車の脇を抜け、
あっという間に
われわれが待つタクシーに乗り込んだ。
乗り込むと同時に信号が青になり
呆然とする2人の前を通過していった。
もちろん、こちらを見ることもなく。

上には上がいた。

こんな真似は絶対に男にはできない。
取り残された2人、
稲光と共に龍と虎が空を舞っていた。

(2/10/2006)


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