Column

#43


by marcy B  

 

金は使い古しの札を用意しろ!


先日、大学時代の親友の父親が亡くなられ、
葬儀の際、香典の会計係を依頼された。

黒の上下に黒のネクタイ、
スキンヘッドにサングラス
金を勘定するには風体がよくない。
参列者の方への心証もよくないだろう。
とはいえ、サングラスは外しても
スキンヘッドは・・・
「お坊さんみたいでイイじゃないですか」
と友人の奥さんのひと言。
マルコメ・X(エックス)
だとよいけど・・・。

お通夜は18時から。
受付のすぐ後ろに陣取り、
参列者の方々がお香典を出し、
記帳されているのを眺めていた。
しばらくして受付からお香典がまわってきた。
お香典の金額を確かめるため
こちらの帳簿にも名前を記入してから
中身を取り出す。
さすがに机の上で袋を開けるのは躊躇(ためら)われたので、
参列者から見えないよう膝元で開封した。

やっかいだったのは
細い針金状のものを幾重かの帯状にした

水引き!

これがなかなか外れてくれない。
気が引けたが袋を縦に半折りにして
爪で押し下げるようにして 外し
上の折り返しだけを広げ
お札の入った中袋を取り出し
記入された金額と相違ないかを確認した。
罰当たりなことだが
苦労して取り出した中身が3000円だったりすると

水引きが印刷された袋にしろよ!

と思ってしまった。

さらにやっかいだったのは
お金を取り出して確認したあと
中袋と水引きを

元にもどす

のが大変だった。
まあ、慣れるものではないのだろうが。

今回、会計をやって思ったのは
やはり香典には冠婚葬祭の習わしにならって
使い古したお金を入れるのが礼儀だと思った。
年配の参列者が多かったわりに
8割近くが新札だった。
見るからにみなさん銀行のATMでお金をおろして
そのまま袋に入れているようで
ぴったり重なった札を勘定するのが大変だった。
お札の勘定に慣れていないのも情けないが、
まさか指をなめるわけにもいかないので
乾いた指先で何度も何度もこすりながら数えた。
身代金ではないが使い古した札にしろ!


お金を入れ忘れる方もいらした。
名前が書いてあっても見知らぬ方ばかりなので
誰なのかまったくわからない。
事が事だけに大きな声で名前を呼ぶこともできない。
もしわかっても入れた、入ってないの
水かけ論にもなりかねない。

幸い、受付をした女性が覚えていたので、
斎場の係の方に
取り立て
をお願いした。
その手際は見事のひと言。
数人が話しをされているところにそっと近寄り、
1人の年配の方(容疑者)の腰にやんわりと手を当て、
何気なく環から連れ出して
部屋の隅まで連れて行き
証拠物件の空の香典袋を見せ
なにやら耳元で囁いていた。
入れ忘れた方も
「こりゃあ失敬」と笑いながら
すんなりとお金を出した。

全落ち

何事もなかったかのように
係の方が戻ってきて
他から見えないようにしながら
香典袋を上にして
ピン札の壱萬圓を差し出した。
凄い! 
プロのテクニック?

帰り際、フロント前の壁を見ると
額に入った認定書が何枚も飾られていた。

葬儀ディレクター1級取得認定書

世の中にはいろいろな資格があるんだなと思った。
通信教育のU−CANでも取得できるのだろうか?

(14/11/2005)


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