Column

#34


by marcy B  

 

子供ためにクワガタを探しに行く・エピソード3

先日、息子の通う保育園に
カブトムシが寄付された。
園児たちは大喜びしたそう。
息子も大変気に入ったようで、
毎朝、登園すると
虫カゴのカブトムシをじっと眺めていると聞いた。
さすがにサワガニの時とは違い、
子供たちに遊ばれても
虫キング・カブトムシは死ぬことはなかった。

それを聞いて、
またまた親ばかパワー全開!
フルスロットル
8月終わりの週末、カブトムシではなく、
クワガタを捕まえに
息子と妻と3人で山梨へ向かった。

中央高速勝沼ICで高速を出て、
ワインで知られる勝沼町を抜け、
大菩薩峠の麓、塩山市の山間部へ行った。
何年か前、クワガタを捕まえたことがあったので、
あそこなら確実にいるはず。
あわよくばカブトムシをと浅はかな親子。

モノより想い出、ってクルマの宣伝か。

車を降り、どこかにいるはずと林のなかを探索した。
途中、ぽつりとある民家で
「この辺にクワガタとかいませんか?」と尋ねると、
「この道を下ると、クヌギの木があって、
みんなよく探しにきてますよ」
と教えてくれた。

ほらね、やっぱりいる。

教わった通り道を下ると、クヌギの林があり、
間伐材などが上手に組まれ、
誰かがクワガタたちの巣として人工的に造っていた。

必ずいる。

木のくぼみを覗きながら林の中を30分近く徘徊した。
やっぱり見つからないか・・・
諦めかけていたとき、
折れた枝で木を叩くと
ポトリと黒豆のようなものが落下した。

うん? なんだ??

枯れ葉が積み重なった地面に
仰向けになってもがいているクワガタを発見!

やった! 遂に見つけた!!

全長1.5cm、

超〜小さい。

それでも雄のクワガタだった。
まるでペットボトルのおまけについてくるフィギアのよう。
さらに探すと、今度はさらに小さい雌を発見し、捕獲した。

カップルの誕生。

親子でヤブ蚊に喰われながら2匹をゲット。
これで親の面目躍如?

意気揚々と道を戻った。
さきほどとは別の家の前を通ると、
香ばしい匂いがした。
外でご婦人がなにやら大きな鍋をかき回していた。
「何を作られているんですか?」と聞くと、
「畑でとれた大麦を、麦茶用に煎ってるんです」
と、教えくれた。
横にいたご主人が
「これを1度飲んでしまうとね、市販の麦茶は不味くて飲めないですね」と。
えっ、そんなに美味しいの。
飲みてぇー!

子供のためにクワガタを探しに来た旨を伝えると、
親切にも、ご主人がお孫さんたちのために捕まえてあった
カブトムシのつがいをくれた。
これぞ、棚からぼた餅。
さらに、トマトやウリ、そして炒りたての麦茶までいただいてしまった。
ぼた、ぼた、ぼた、なんて親切な人たちなんだろう。

感謝、感謝です。

ただ、1度飲んで、市販のものが飲めなくなったらどうしよう・・・

こちらのご夫婦は、リタイアされて、
この地に移り、周辺を畑にして自給自足の生活を楽しんでいるという。
しかも、小屋まで自分で建てたという。
指さす方を見ると、立派な庵があった。
おおっ、まさに「人生の楽園」
西田敏行もびっくり。

畑の横の大きな栗の木が折れていたので、
気になって誰かが実をとるために折ったのですかと尋ねると
先日の台風で折れてしまったという。
「落ちた栗の実を食べに熊がよく出るので気をつけて」
と言われて愕然とした。
さっきまで誰もいない林のなかを
間抜けな親子は、のこのこと歩いていたのだ。

この辺りはイノシシや熊が畑を荒らすという。
どおりで、畑の回りに獣除け用の電線が張り巡らされている。
イノシシはいるだろうなとは思っていたのだが、
まさか熊までいるとは。
もしも、林のなかで出会っていたら
息子のへなちょこフォースを使っても何の役にも立たない。
同じ熊でも風太くんでもないかぎり勝ち目はない。
背筋が少し寒くなった。

エピソード3完結
(12/9/2005)


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