Column

#32


by marcy B  

 

子供ためにサワガニを飼う

5月初旬、もうすぐ3歳になる息子の通う保育園に、
サワガニが寄付され、子供たちは大喜びしたそう。
わが息子も大変気に入ったようで
毎朝、登園すると真っ先に手にとって遊んでいたらしい。
もっとも、子供たちに遊ばれたカニたちはたまらない。
毎日、カニたちは天国への階段を駆け上り、
遂には全滅してしまったという。

それを聞いて
親ばかパワー全開
サワガニを買う(飼う)ことにした。

普通、ペットショップ等で買えば、
観賞用? は1匹いくらなのだろうが、
近くにある築地の場外で注文したので
食用で1パック約40匹で1000円だった。

場外をぐるぐるめぐり、ようやく扱っているという1軒を見つけた。
翌日の仕入れになるといわれたので、前払いで1000円を手渡す。

翌日、受け取りに行くと、仕入れを忘れたらしく、
「今日は不漁で良いのが入ってこなかったんだよ」
と、社長自ら平謝り。
まあ、近いから良いけどと、出直すことになった。

翌日、出直しをさせたお詫びらしい

「おまけの大サービス」


通常より盛りだくさんのカニを用意しておいてくれた。
本来なら2000円はするといわれたのだが、
実はそんなにいらなかった。

連日、丸刈りにサングラス、アロハシャツで行ったので
飲食店関係の人間と勘違いしたらしい。
唐揚げにしてつまみにでもすると思ったのだろう。
もっともこの風体だと調理師には見えなかったろうけど。

思いがけず大量のサワガニになってしまったので、
用意していた30センチ四方のものでは
到底、収容しきれないので困ってしまった。
10匹程、事務所の女性に引き取ってもらった。

残り約30匹

仕方なくバルコニーに置いてあった
不用になった衣装ケースを代用した。
日曜大工センターで庭石を1袋買ってきて
よく洗って衣装ケースの中に敷き詰めた。
以前使っていた水槽用ポンプフィルターを取り付けた。
水槽の大きさからするとパワー不足は否めない。
水は天日干しをせず、浄水したものを使った。

準備万端

小さなパッケージにぎっしりつめられていたカニたちを
衣装ケースの中に解き放つと、右往左往して走り回っていた。
さすが魚河岸で仕入れただけあってイキがよい。
これじゃ正確な数が勘定できない。
まあ、彼らにすれば生まれ故郷の広さに比べたら
It's a small worldなのだろうけど。

翌日、環境が合わなかったのか2匹が死んでいた。
先が危ぶまれたが、それからしばらくは天国へ旅立つカニはいなかった。
毎朝晩、割り箸でカニの排泄物を、
フィルターの吸い上げ口に寄せ集め、
毎週末、カニをバケツに移し、
衣装ケースと敷石をきれいに洗う作業を続けた。
日々掃除をしていても一週間分のカニの排泄物と餌の残りかすが石の間から
ごっそりと出てくる。
たまにカニのハサミや足が出てくることもある・・・。
とはいえ平和なサンクチュアリーは継続していた。

勝手のわからない息子は、
脆弱なポンプをいじって怒られ、
カニが潜んでいる石を崩しては怒られ、
ホースで掃除中に邪魔だと怒鳴られ、
妻いわく、誰のカニなの?

6月に入り、出張があり、10日間家を空けた。
妻からのメールには

「毎日、順調に死んでいる」

と書かれていた。
まあ、仕方ないかと諦めていたら、
3日目以降は、本当の意味での「順調」になり安心した。

6月下旬、週一の掃除をしていたとき、
カニを移していたバケツの底にイクラみたいな小さな玉が2つ転がっていた。

卵!


衣装ケースに移したカニをみると、そのうちの1匹のお腹が膨れていて
小さく朱色の卵を抱いていた。

7月上旬、週末の掃除の再、彼女は動かなくなっていた。
お腹の部分が大きく開いた状態で、卵は1つもなくなっていた。

残念!

他のカニと別にすればよかったと、

後悔

保冷剤などを入れ、暑さ対策はしているが、
これから本格的な夏をむかえ、高温のため死亡するカニが増えるはず・・・
まあ、唐揚げになるよりは多少長生きできていると思う。

当の息子は「スターウォーズ・エピソード3」にはまり、
「ダーシュベーダ、ダーシュベーダ」と言って、
既にカニへの興味はなくなっている。

そして親ばかというフォースはまだまだ続く。

エピソード1完結
(14/7/2005)


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