Column

#14


by marcy B  

 

新天地

オートバイのロードレース最高峰である世界選手権モトGPで、
バレンティーノ・ロッシ選手が総合優勝した。
これまで01年から03年までホンダ・ワークスの
トップライダーとして優勝を果たしてきたが、
今シーズン直前、突然、ヤマハに移籍してしまった。
完成されたホンダのマシンだから彼はチャンピオンになれたと言われるのが嫌だったのだろう。
ホンダだけでなくヤマハにとっても寝耳に水のできごとだった。
開発途上のヤマハのマシンYZR-M1を駆ってのレースは、
3年連続のチャンピオンのプライドをズタズタにしかねない。
ところが、第1戦でロッシは優勝を成し遂げてしまった。
このレースは観ていて本当にハラハラさせられたが、
見事に最初にゴールラインを駆け抜けて行った。
ウイニングランの途中、誰もいないコーナーでマシンを止め、
しゃがみ込んでしまった。
泣いているようだったが、ヘルメットで真意はわからなかった。
しばらくして彼は立ち上がるとマシンの労をねぎらうように
カウルを手で何度か叩いたのが感動的だった。
ホンダの力で勝ってきたという陰口を、
まさにロッシ自身のドライビング・テクニック、
実力でねじ伏せたのだから本当に立派だ。
もちろんホンダに在籍していればもっと楽に優勝していたただろう。
本人自身が今年の総合優勝はないだろうと思っていたという。
しかし、そうした状況に満足できず新天地へ身を投じたロッシは本当に凄いと思う。
そしてヤマハにとってウェイン・レイニー以来、12年ぶりの優勝をもたらした。
「ホンダでやることはなにもない、新しいことをやりたかった」という。
では、来シーズンはスズキ(今シーズンの優勝はない)、
その次はカワサキと渡り歩いてくれたら、
ファンにとってはたまらないモトGPになるのだが。 

(1/11/2004)


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